住友重機械建機クレーン株式会社は、基幹システム切替え のタイミングで、Outsystemsに代わりMendixを採用

 

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住友重機械建機クレーン株式会社(以下、HSC)は日本を代表する企業集団であり、そして長年にわたり日本経済の成長を支えてきた革新的なクレーンを提供しつづけてきた住友と日立が手を組み、2002年に日立住友重機械建機クレーン株式会社として発足した。そして2018年に住友重機械工業株式会社の連結子会社として住友重機械建機クレーン株式会社と社名変更し、新たなスタートを切った(2022年、住友重機械工業株式会社の100%子会社になる)。

基幹システムの切替えに伴うMendixの導入:求められる高速開発

社名変更は2018年であるが、現在につながる内製化への転換はその前年、2017年の資本構成変化に遡る。住友重機械工業株式会社の連結子会社化に伴い、日立グループ内で提供を受けてきた共同利用型システムからの離脱が決まり、短期間で会計システムへの切替えが必要とされた。

また従来のHSC ではデータの型式交換用途としてOutsystems製品を利用していた。会計システムへの移行に際しても、当初はOutsystemsを用いたローコード開発を継続する予定であった。しかし想定された企業の成長により、試算の結果Outsystemsの利用金額が予算を大幅に上回ることが判明した。これはOutsystemsが、機能増加やシステム増強に伴い高額になる仕組みとなる料金体系だからである。HSCの情報システム部長、菅野 克博氏としては、代替案の検討が必要になった。

菅野氏が白羽の矢を立てたのは、Outsystemsとともに、ローコード開発で世界市場をリードしていたMendixである。Mendixの料金体系はOutsystemsとは異なり、あらかじめ利用システムの拡大に対応し、スケーラビリティを担保するものであったため、基幹システム入替え後の成長にも対応できることが予想された。2017年当時、Mendixを日本市場で取り扱うのは株式会社ビルドシステムのみであったため、菅野氏はビルドシステム社にOutsystemsからMendixへのリプレース開発を委託する。Mendixへのリプレース開発は無事成功し、以降はMendixを用いてローコード開発を進めることになる。

内製化への挑戦

基幹システムの短期切替えプロジェクトを乗り切った菅野氏の次の目標は、アプリ内製化の向上であった。長年、各種システム開発に携わり、2015年にHSC (当時は日立住友重機械建機クレーン株式会社)に入社した菅野氏が、その知識と経験を踏まえ、100%外注されていたアプリ開発コストの削減のみならず、新会社において新たな成長を実現し支えるためには、多くのアプリを迅速に届けられるように、社内に開発ノウハウを蓄積する必要を痛感していた。そのために、菅野氏が率いる情報システム部は内製化率向上を目標とした。現在、情報システム部システムグループ主任の渡辺 孝史氏、同じく情報システム部システムグループ主任の野口 貴生氏を中心に、Mendixを用いたローコード開発を進める体制を有し、日々内製開発を進めている。しかし、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。

開発内製化への取り組みで、大きな障害になったのは開発における共通ルールの不在であった。コーディングにかかる時間短縮という観点では、Mendixローコードは十分に期待に応えるものであった。しかし開発プロジェクトごとに個別にモジュール開発を進めたため、企業システムの成長に伴う開発コスト逓減効果、いわゆるラーニングカーブが頭打ちとなってしまった。より抜本的な開発コスト削減のためにHSC 情報システム部は、個別システム内で用いるモジュールやユーザを社内で共通化した。一度準備したモジュールやユーザは、新しいシステム開発でも理解できるようにしたのである。その結果、開発速度は大幅に改善された。

HSC が直面した、より根本的な内製化の課題は、開発人材の確保である。日本全体で問題となりつつあるIT人材不足が内製化の大きな障害となったのである。人材確保に関するHSC の対策は、徹底したローコード、Mendixの活用である。まずガバナンスの一環として、Mendix以外のローコードツールはもちろん、Javaなど他言語の利用を禁止した。その上で、2019年には「開発標準」を定めて、Mendixを用いたアプリ開発における、望ましい「作法」を定めて開発現場に徹底した。

もちろんローコード未経験者への教育にも隙は無い。情報システム部システムグループ主任の渡辺 孝史氏は、「Mendixそのものがプログラマ育成期間の短縮に貢献しており、(他言語と比べて)平均で半分以下の時間で、開発スキルを習得できる」と語る。しかしいわゆる「2025年の崖」に向けてさらにIT人材確保競争は激化しており、効率的な育成には「今後も取り組む」(渡辺氏)予定である。

これらの取り組みにより、HSC における内製化比率は、新規プロジェクト全体の50%に達した。今後はさらに内製化を進め、「HSC全体の拡大、引いては日本経済の成長に、さらに積極的に貢献できるようにしたい」と菅野氏は語る。

要約

  • ライセンス価格が機能や連携システムの数に依存するOutsystemsは投資コストが増大するリスクがあった。ライセンス価格を気にせず機能拡張が継続可能で、スケーラビリティに富むMendixの方が価格競争力及び投資計画の最適化の面で優れていた
  • 内製化のカギを握るのは、開発に関する共通ルールの確立である。また厳しい人材獲得競争の中、人材の短期育成の重要性が増している。Mendixの場合、他言語の半分以下の時間で育成が可能
  • Mendix採用により、内製化比率が50%(システム数換算)まで上昇

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