NECの社内DX推進および生成AI活用促進にMendixを採用

 

 

 

「ローコードは、業務領域に縛られず、何にでも活用できますが、だからこそ、企業でしっかりとした導入戦略が必要です。」

NECグループのシステムアーキテクチャを統括する関 徳昭氏は語る。

NEC コーポレートIT・デジタル部門 経営システム統括部上席プロフェッショナル 関 徳昭氏

私たちは、Mendixが対外的に公開している122件の利用事例 (Customer Stories)をすべて徹底的に分析し、Mendixがグローバルでどのように活用されているのかを分類しました。

ローコードのCoE(センターオブエクセレンス)として、アプリ開発・利用のガバナンス強化を担ってきた吉澤 憲治氏は、分析結果を示しながら語った。

 

1.NECにおける「社内のDX」の位置づけ

NECは「2025中期経営計画」においてさらなる成長を目的とし「社内のDX」、「お客様のDX」、「社会のDX」を経営の中核と設定している。「社内のDX」では、自社をゼロ番目のクライアントとする「クライアントゼロ」の考えのもとNEC自身が先進的な社内のDXを実践し、クイックにアジャイルに社内変革を推進。そして社内に蓄積された活きた経験やノウハウをお客様・社会へ還元し、循環させていくというのがNECの社内のDXのミッションだ(図1)。

図1 NEC 2025中期経営計画における「社内のDX

 

2.ノーコード、ローコード、プロコードの使い分け

そして、NECが「社内のDX」をアジャイルに高速に推進するために、採用したのがローコード開発プラットフォームMendixである。開発初心者であっても短期間でローコード開発スキルを習得し、小規模でも初期段階で成功実績、実感を得るという考え方、いわゆるQuick Winを通じて早期に成果を出すことを目指した。NECではノーコード開発も同時に取り組んでいるが、機能実現性、スケーラビリティに限界があり、データ量、利用者数が小規模かつ簡単な業務での利用に留めている。

一方、Java等のプログラミング言語、いわゆるプロコード開発については社内に豊富なノウハウがあり、習熟したエンジニアを多数抱えているが、Quick Winには最適なソリューションではないと判断した。

NEC コーポレートIT・デジタル部門 経営システム統括部ディレクター 巽 啓樹氏

NEC コーポレートIT・デジタル部門、経営システム統括部ディレクターの巽 啓樹氏は次のように語る。「弊社は、これまでウォータ―フォール型の開発に習熟していましたが、DX推進のためにはQuick Winを実現するアジャイル開発の導入を急ぐ必要がありました。Mendixを活用すれば、エンジニアは2週間と比較的短期間で開発スキルを習得でき、中小規模の自由度の高いアプリケーションをプロコード開発よりも容易に素早く開発できるようになりました。また、MendixJavaJavaScriptなどでの機能拡張が可能であるため、既存ノウハウ、人材も活用でき、アジャイル開発の実績がグローバルで多いというのも採用の要因でした。

現時点でNECでは図2のとおりに複数のツールを役割に応じて使い分けている。

 

2 NEC社内における開発ツール(一部)

3.Mendix利用用途および成果

Mendixは、上記図2のとおり、まず基幹システムSAPにおける外部アプリ開発、いわゆるSide by Sideで利用されている。これはSAPシステムにおいて、Mendixが数多くの実績があること、並びにSAPMendixのグローバルレベルでのパートナーシップを評価してのことである。Mendix導入の結果、従来利用してきたJavaに対し、Mendix46%の開発工数削減を実現できた。

NEC コーポレートIT・デジタル部門 経営システム統括部プロフェッショナル 吉澤 憲治氏

Mendixのもう一つの利用方法は、Quick Winを実現するための汎用型ローコードとしての活用である。ここで豊富な開発経験を有するNECが取った手法が、非常に興味深い。実質2週間でプログラミングができるようになるMendixの採用により、ともすればNEC各部門に所属する高度ITスキル人材によって野放図に利用され、社内にいわゆる「野良アプリ」が跋扈する恐れがあった。CoEを主導する吉澤 憲治氏は、アプリケーションポートフォリオを全体管理するスキームを構築することにより、NEC社内にアプリケーション開発に関するガバナンスを確立した。その結果、「弊社内に野良アプリは皆無です」と吉澤氏は断言する。

 

4.社内利用の生成AIとMendix

ChatGPTの登場とともに、世界中が生成AIGenerative AI)の活用に注目している。もちろん長年AIの研究開発に投資し、膨大なノウハウをかかえるNECの取り組みは大規模かつ迅速である。NEC Generative AI変革オフィスをCIO/CISO直下に立ち上げ、2023年5月には、NECの社内向け生成AIサービス利用を開始した。531日には早くも社内向け生成AIサービスへのAPIをリリース、そして75日にはNECが開発したLLM発表もしている。

この社内向け生成AIサービスにおいて、現在Mendixは、NECが開発したLLMを含む複数のLLMにアクセスするためのフロントエンドアプリとして利用されている。

開発を主導した巽氏によれば、従来型の開発手法であれば3ヶ月かかっていたが、Mendixを利用することで「2週間に短縮できた」と言う。その結果、タイムリーにアプリ・機能を利用者へ提供できるようになった。

こうして、短期間に構築した社内向け生成AIサービスを活用し、実際に資料作成時間の50%削減、議事録作成の時間を平均30分から約5分に短縮、また社内システム開発におけるソースコード作成業務の効率化で工数80%の削減を実現出来ている。

 

5.生成AIとMendix、今後の活用方法

 

関 徳昭氏は、「今回はQuick Winで取り組みを進めるためにMendixを利用し成果を得ているが、これはあくまでファーストステップ。次のステップは、Mendixと生成AIを組み合わせて、アプリケーション製造そのものに留まらないドキュメントやテストケースの自動生成といった、開発工程全体の生産性を劇的に向上することにある」とし、「今後は、NECが開発した生成AIMendixを組み合わせて、開発の概念を一新することを目指す。まだ他社が見いだせていない、世に出せていない価値をNECで創出したい」と続けた。

また、「Mendixには、われわれNECが持たない優れたノウハウがある。Mendixとより強固なパートナーシップを構築し、NEC自身のDX、そしてお客様のDXに還元したい」と抱負を語った。

 

サマリー

  • NECは社内DXの加速のため、生成AI活用とアジャイル開発を展開している。
  • ノーコード製品と比較した結果、ローコードのMendixは拡張性、スケーラビリティで優れていると判断した。
  • NECのエンジニアは、Mendixを使って2週間でプログラミングができるようになった。これはMendixそのものの敷居の低さに加えて、CoE主導で効率的なアプリケーション開発のスキームとガバナンスを事前に確立していたからである。
  • Mendixは社内向け生成AIサービスのフロントエンドアプリとしても用いられた。従来型であればアプリケーション製造に3ヶ月かかっていたが、Mendixを利用することで2週間に短縮できた。

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